2018年に読んだ本ベスト3
1.ギリシア人の物語 I~III
I.民主制の始まり:
塩野七生の近著、ギリシア人の物語の1巻。民主政が生まれて最盛期に向かうまで物語を紡いでいく。スパルタとアテネの対比、第一次と第二次のペルシア戦役を勝利に導いたアテネとスパルタのリーダー達に関する描写は面白すぎて読み始めたら止まらない。
ギリシア人の名前もペルシア人の名前もとにかく覚えられなくてこまった。空で言えるのはソロンくらい。
この本の最後、塩野七生は以下のようにしめている。
人間とは、偉大なことでもやれる一方で、どうしようもない愚かなこともやってしまう生き物なのである。このやっかいな生き物である人間を、理性に目覚めさせようとして生まれたのが「哲学」だ。反対に、人間の賢さも愚かさもひっくるめて、そのすべてを書いていくのが「歴史」である。この二つが、ギリシア人の創造になったのも、偶然ではないのであった。
II.民主政の成熟と崩壊:
民主制全盛期のギリシアが一気に転落していく様子が描かれている。前線で戦っている最優秀な指揮官をあらぬ罪で欠席裁判して死刑にするために本国に呼び出したり、やってはいけないことのてんこ盛り。あれさえなければもう少し何とかなったんでないかってことがいくつかあるけど、そううまくはいかないのが歴史。うまくいくときはとことんうまくいくけど、歯車が狂った時の民主政の難しさが徹底的に描かれる。後世から見るとそれはやっちゃいかんだろの連続。つぎはいよいよアレクサンドロス。
III.新しき力:
アテネとスパルタが凋落し、フィリッポスを王とするマケドニアが台頭し、その息子アレクサンドロスが東征するまでが描かれる。前半三分の一では、フィリッポスが如何にして地方の小国に過ぎなかったマケドニアをギリシア世界を支配するまでにしていくのか、その冷静な天才ぶりが描かれる。残りは、アレクサンドロスが如何にして大王になっていくかが描かれる。アレクサンドロスは私にしてみれば、もはや無謀な天才としか言いようがない人物だ。慎重なフィリッポスとは対照的にアレクサンドロスはとにかく早い。先頭を切って敵に突っ込んでいく。そして、いろいろな意味でのアレクサンドロスは人心掌握がうまい。無二の親友であるヘーファイスティオンの死後、アレクサンドロスは心身ともに崩れていき物語は終わる。
2.人類の足跡10万年全史
10年近く積読していた「人類の足跡10万年全史」をようやっと読み終わった。詳細はほとんど頭に入ってこなかった(細かすぎ!!)が、「現生人類の出アフリカは南ルート経由・一回限り」という説に基づいた人類が広まり方を解説している。この本が書かれてからもう10年以上たっているので最新の学説で書かれた続編が読みたいところ。
ほとんど頭に入っていないのにベスト3に選んでよいのか、という気もしたりするが、全体の流れは大変面白い。
- 作者: スティーヴンオッペンハイマー,仲村明子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2007/08/31
- メディア: 単行本
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3.ヨシダナギの拾われる力
アフリカの写真で有名なヨシダナギさんの本。名前くらいしか知らなかったが、読んでみたら思っていいた以上に面白い本だった。なんでフォトグラファーとして有名になっていいったのか、その拾われ人生が面白おかしく描かれている。